大阪高等裁判所 昭和63年(ネ)1076号 判決 1990年2月28日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人らは、各自、控訴人金に対して一八八七万円及びこれに対する昭和五九年六月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、控訴人朴に対して一八一七万円及びこれに対する同日から支払済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め(控訴人らは、右のとおり当審において請求を減縮した。)、被控訴人らは、主文と同旨の判決を求めた(なお、被控訴人近江八幡市は、控訴人らの請求認容の場合には仮執行免脱の宣言を求める旨述べた。)。
第二 当事者の主張
左のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。
(原判決事実摘示の付加、訂正)
一 原判決三枚目表四行目の「以下「本件市道」という。」を「以下、特別に記載しない限り、同市道のうち後記パチンコ店しんはちまんの敷地東側の部分を「本件市道」という。」と改める。
二 同四枚目表について、三行目の「本件河川」を「本件市道」と、五行目の「本件河川側五〇センチメートルでは」を「本件河川沿いの幅員五〇センチメートル位の部分では道路上を」とそれぞれ改め、末行の「設置されていたとしても、」の次に「バリケードは密接して配置されていなければその効を奏しないのに、被控訴人市の設置した」と付加する。
三 同八枚目表について、初行の「サラサラと」の次に「流れていたと」と付加し、七行目の「本件市道」の次に「(ただし、本件県道よりも南側)」と付加する。
四 同八枚目裏三行目の「右ような」を「右のような」と改める。
五 同九枚目裏二行目の「連帯して」から四行目の末尾までを「右各損害金のうち控訴人金については一八八七万円、同朴については一八一七万円及びこれらに対する本件事故発生の日の昭和五九年六月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を各自支払うよう求める。」と改める。
六 同一〇枚目表一一行目の「国鉄」の次に「(現JR)」と付加する。
七 同一一枚目裏一〇行目の「冠水」の前に「道路に」と付加する。
八 同一五枚目表九行目の「見地からすると」を「見地に立って」と改める。
九 同一五枚目裏五行目の「三明川」の次に「からあふれた水」と付加する。
一〇 同一八枚目表について、六行目の「六条」を削除し、七行目の「立証がなされて」を「立証をなして」と改める。
(控訴人らの主張)
一 原判決には、次に述べるような点において、ものの見方の基本的な誤り或いは事実の誤認がある。
(一) 原判決は、本件転落地点が本件市道のどの位置であるかとか、転落直前の広明の動静、転落の態様及び原因等、転落状況の詳細は不明であるとする。
しかしながら、これは本件事案の特殊性や問題点に目をつぶろうとするものといわざるを得ない。広明の転落地点が本件県道よりも北の溢水していた本件市道であることは明らかであり、溢水していた本件市道から本件河川へ広明が転落して死亡したという事実に積極的に着目するのが本件におけるものの見方の基本である。
(二) 原判決が本件市道は本件県道などに比べて通行量が少ないとするのも、重大なものの見方の誤りである。
重要なのは、通行量の比較ではなくて、本件市道が通常交通量が多いかどうか、危険性が大きいかどうかである。原判決にはこの視点が欠落している。
近江八幡市は、滋賀県第四の都市であって、人口七万人近く、大阪や京都の近郊都市として人口はさらに増加傾向にある。そして、本件事故発生場所は、JR近江八幡駅から至近距離にあって、付近には同市内における唯一の大手スーパーマーケットであって大勢の買い物客が出入りする「平和堂八幡店」があり、交通の要衝である県道がすぐ横を通ってこれに沿って商店(本件パチンコ店はそのうちの一つである。)が立ち並んでいて、いわゆる駅前の繁華街の範囲内にあり、同市内の中心部に位置している。
なお、本件市道の少し北には児童公園があって、児童の動きも無視することができず、原判決がいうように本件市道が子供の遊び場所になっていなかったとの事実を認定するに足りる証拠はない。
(三) 原判決は、本件市道にバリケードが設置されていたこと等を強調するが、その実態は、垂れ下がったロープが張られていて(なお、ロープは欠落していた部分もあって、おざなりに設置されていたというべく、事故防止設備として欠陥があった。)、点滅灯が一部に付けられていたに過ぎない。
右のようなものでは、五歳の幼児にその存在意義を理解させるには不十分であり(かえって、幼児に対しては興味を抱かせてそれに近寄らせる可能性があった。)、また、物理的に進入を止める効用も全くなかった。右事実を認識することが肝要であるのに、原判決にはこうした視点が欠落している。
(四) 本件市道が本件河川沿いの部分で深さ約二〇センチメートル余り冠水しており、本件県道は冠水していなかったとの原判決の認定はそのとおりであろう。
重要なのは、本件市道の右のような冠水は誰も経験しない事実であること、本件県道を見た限りでは本件市道の冠水を予測することはできないことである。原判決は、右の点に着目していないか、これから目をそらせている。
二 原判決は、右に指摘したような点において誤りを犯した結果、被控訴人らの責任について判断を誤った。
(一) 被控訴人市のとった措置では、本件市道への車両の進入は禁止できても、歩行者の通行を規制するには不十分であった。また、溢水による危険の存在を住民が知り得る外観を作出していたともいえない。現に、控訴人らはこれに気付くことなく本件パチンコ店に至ったのであり(なお、同店内から本件市道へ出る場合には、なんら規制措置はなかった。)、まして五歳の幼児であった広明は全く知るすべがなかった。
したがって、右措置が危険の存在を住民に周知させ、これに近寄らせないための措置として通常は十分である旨原判決において判示したのは、明らかに誤りである。
(二) 原判決は、広明の転落直前の動静、転落の原因等は不明であり、本件事故が通常予想しえない広明の行動に起因するものであった旨判断した。しかしながら、これは、なんら根拠のない独断であって、経験則と通常人の思考過程に反するものである。
前記のような、本件事故発生の場所が市の中心部であったこと、被控訴人市のとった措置が歩行者の進入を規制し得るものではなく、まして幼児に対してはなんら効果のないものであったこと、通常経験することのない本件市道への冠水と道路と川の境界が不明であったことからすると、本件市道と本件河川との境界が不明であったために広明が本件河川に転落したことは容易に推認できる。そうであるのに、あたかも自殺に類するかのように、広明の行動が通常予想し得ないものであったというのは、明らかに判断の誤りである。
(三) 専門家の指摘によると、五歳児は本件のような状況下で危険をコントロールできる能力を欠いており、広明の生活環境に照らすと、同人についてはそれがなお一層妥当するとのことである。
原判決は、本件の状況下で広明に判断力があったかのような前提に立っており、科学性を欠いているものというべきである。
三 本件河川及び本件市道の設置、管理に瑕疵があったことは、原審において主張した事実のほか、次のような事実によって明らかである。
(一) 本件河川が年二ないし三回氾濫していたことは、原審でも主張したとおりである。そして、右氾濫によって道路に冠水する部分は、本件事故発生場所付近に限られていた。そうすると、危険防止の措置をとることは極めて容易であったことになる(なお、それに要する費用も低廉であることは先に主張したとおりである。)。
(二) 本件市道にガードレール、フェンス等の防禦柵を設置することは、最低限度必要であった。
本件事故発生の場所が近江八幡市の中心部であったことは前述のとおりであり、本件事故の前から、本件市道付近及び平和堂周辺の住民は、被控訴人市に対して溢水防止の要望をしていた。これに対して、被控訴人市は、その必要性を理解していながら、財政的な理由で被控訴人県に対して対策を要求し、また、分水対策によって危険を処理しようとしていた。
本件事故発生の当日本件事故のほかにも付近でもう一件の転落事故があったことは、希有の事例であるというべく、本件市道はそれほど危険性を有していたことになる。
(三) 平和堂は、本件河川の溢水がまだなかった昭和四七年頃から本件河川に面する部分にフェンスを設置していた。右事実は、溢水の有無に関係なく都市の中心部の河川にはなんらかの防護柵を設置するのが常識であることを示している。
ところが、被控訴人らは、現に溢水が起こって住民から対策の要望を受けてもなおこれを放置し、本件事故が発生した後に漸くガードレールを設置したものである。
(被控訴人らの主張)
控訴人らの右各主張は、いずれも争う。
第三 証拠関係<省略>
理由
一 当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきであると思料する。その理由とするところは、次に付加、訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
(一) 原判決一八枚目裏について、八行目の「第三号証、」の次に「第七ないし第九号証、第一四、第一五号証、第一七ないし第二五号証、」と、一〇行目の「第七号証」の次に「(弁論の全趣旨によって昭和五九年七月二〇日頃撮影されたものと認められる。)、本件市道の写真であることについて争いがない検甲第八ないし第三〇号証(当審における控訴人金の本人尋問の結果によって昭和六三年一二月一二日頃撮影されたものと認められる。)、本件事故現場付近の写真であることについて争いがない検甲第三二ないし第四三号証(右控訴人本人尋問の結果によって昭和五九年七月から同年八月にかけて撮影されたものと認められる。)」と、一〇行目から一一行目にかけての「第九号証」の次に「(昭和六〇年八月七日に撮影されたことについて争いがない。)」と、一二行目の「証人」の前に、「原審における」と、それぞれ付加する。
(二) 同一九枚目表について、初行の「山田三喜」の次に「及び当審における証人岩越善一」と、同行から二行目にかけての「本人尋問の結果」の次に「(控訴人金については原審及び当審、控訴人朴については原審)」と、七行目の「知人」の次に「の松村栄太郎」とそれぞれ付加し、一〇行目の「知人」を「松村」と改める。
(三) 同一九枚目裏四行目の「内側」の次に「(北側)」と付加する。
(四) 同二〇枚目裏について、初行の「国鉄」の次に「(現JR)」と、二行目の「停車場線」の次に「(歩車道の区別が設けられている。)」と、三行目の「市道である。」の次に「本件県道と右近江八幡停車場線との交差点は信号機によって交通整理が行われていたが、本件県道と本件市道との交差点には信号機は設置されていなかった。」と、それぞれ付加し、一一行目の「施設はない」を「施設はなく、本件市道を北西に向かって進んだ所に児童公園があるものの、本件市道を児童、幼児が頻繁に通行していたとは認められない。」と改める。
(五) 同二一枚目表について、初行の「通行量は少ない。」の次に「本件市道の北方には駐車場が多く存し、本件市道を利用するのは、国鉄(現JR)近江八幡駅方面へ向かう通勤、通学者等或いは本件パチンコ店の客が多いものと推認される。」と付加し、二行目から三行目にかけての「なっていなかった」を「なっていたとは認められない」と改め、一〇行目の「本件市道は、」の次に「歩車道の区別が設けられておらず、」と、一二行目の「少し低い。」の次に「なお、本件市道の南端(本件県道との交差点)と北端(本件パチンコ店敷地の北東角で、ほぼ東西に通じる道路との交差点)との間の距離は、約五一・三メートルである。」と、それぞれ付加する。
(六) 同二一枚目裏について、一〇行目の「五時過び頃」を「五時過ぎ頃」と改め、一一行目の「バリケード及びロープ」を「バリケードの位置が変わっていたり、ロープが緩んでいたの」と改める。
(七) 同二二枚目裏について、六行目の「大きく」を「著しく」と改め、一〇行目の「一五センチメートル」の次に「(ただし、本件事故当時についてかどうか必ずしも明らかではない。)」と付加し、一一行目から一二行目にかけての「乙第六号証」を「乙第五号証」と改める。
(八) 同二三枚目表について、五行目の冒頭に「本件県道と本件市道との交差点の東北角で」と、六行目の「同店の」の次に「二階部分から屋根の上にかけて、」と、それぞれ付加し、七行目から八行目にかけての「ネオンが各一基」を「パチンコ」と表示する大型のネオンサインが各一組」と改める。
(九) 同二三枚目裏について、一〇行目の次に左のとおり付加し、一一行目の「2」を「3」と改める。
「2 前認定の事実に基づき、本件市道から本件河川への転落を防止すべき恒久的な施設を設置していなかったことが本件河川或いは本件市道の設置、管理の瑕疵に当たるかどうかについて先ず検討する。
本件市道の存在する場所が近江八幡市の中心部に近く、付近に大勢の人が出入りするスーパーマーケット「平和堂八幡店」があるとの控訴人らの主張は、これを肯認することができる。しかしながら、都市の中心部に存する河川に隣接する道路の全てについて防護柵を設置していなければ、その設置、管理に瑕疵があるとはいえないのであって、当該道路の利用状況(交通量の多少、どのような人が利用するか等)、隣接する河川の状態(川幅、深さ、水量等)などを具体的に検討する必要がある。本件市道及び本件河川についてこれをみるに、その所在地は国鉄(現JR)近江八幡駅やスーパーマーケット「平和堂八幡店」に近いとはいえ、本件市道は、いわゆる目抜き通りではなくて裏通りであって、「平和堂八幡店」から本件市道側への出入口はないから、同店が近くにあるために通行量が多いとも考えられない。そして、本件市道の通行量とその幅員を併せ考えると、本件市道に転落防止設備がないと平常時の通行に危険があるような状態であったとは認められない。また、本件市道が学校や幼稚園の通学、通園路になっていたとは認められず、北西方向に児童公園があるものの、本件市道とは少し離れており、本件市道を児童、幼児が頻繁に通行したり同所が子供の遊び場所になっていたとは認められない。本件市道に面して本件パチンコ店の出入口があるが、これは裏口であって、本件県道側の出入口或いは駐車場側の出入口に比較して利用者は少ないとみるべきであるし、同店に年少者が保護者の監護なしに一人で出入りすることは通常はないと考えられる。そして、本件河川は、道路から川底までの深さが約一メートルであって、平常時の水深は約四〇センチメートルに過ぎないから、平常時であれば仮に転落したとしても危険は少ないと認められる。
右各事実を総合して考えると、本件市道に恒久的な転落防止設備が設置されていなかったことが本件市道或いは本件河川の設置、管理の瑕疵に当たるということは困難である。
なお、本件事故の後に本件市道にガードレールが設置されたこと、「平和堂八幡店」においてその敷地と本件河川との境界にネットフェンスを設置していることは控訴人らの主張のとおりである。しかしながら、ガードレールは、住民からの要望もあったので、被控訴人近江八幡市と被控訴人滋賀県とが協議のうえ設置したものであって、本件事故の当日二件の転落事故があったことも影響しているとは思われるが、本件市道の設置、管理の瑕疵を認めたうえでのものではなく、右事実によって右瑕疵の存在を認めることはできない。また、子供を含む大勢の人が出入りする「平和堂八幡店」としては、その敷地と本件河川との境界に転落防止設備を設置するのは当然であって、本件市道の場合と同一に論ずることはできない。
さらに、控訴人らの主張するように本件河川が本件事故の頃まで年数回氾濫していた事実も認められるが、氾濫を未然に防止する方策を立て、現に氾濫した場合これに対処する措置をとることが要求されるのは別として、それゆえに本件市道に恒久的転落防止設備を設置すべきであったとはいえない。」
(一〇) 同二四枚目表三行目について、「水遊びが好きで」を「水遊びが好きで、好奇心が旺盛で」と改める。
(一一) 同二四枚目裏について、四行目から五行目にかけての「、広明は」から七行目の「年令であること」までを削除する。
(一二) 同二四枚目裏一二行目の「ア」から二五枚目裏一二行目の末尾までを左のとおり改める。
「なお、被控訴人近江八幡市が本件事故当時危険防止措置として設置したバリケードとロープは、人の進入或いは転落を物理的に阻止するに足りるものではなく、前記のとおりロープが張られていなかった部分もあったのであるから、右バリケードやロープの設置された意味を理解できない幼児が冠水した本件市道から右ロープの下を潜り、ないしは、ロープの張られていない箇所から本件河川に接近して転落し、あるいは、本件河川の近くで幼児が転倒すれば水に流されてロープの下を通って川に転落することも考えられるものであった。そして、詳細は不明であるものの、先に認定したところによれば、広明は、冠水中の本件市道に立ち入って本件河川に接近したために、道路と河川との境界が判らなかったためか、流水に足をとられる等の理由によって本件市道上で転倒して水に押し流されたために、本件河川に転落するに至ったものと推認される。
しかしながら、前述したような本件事故現場の地理的環境、とくに、同所が昼間でも子供の通行が多い場所とはいえず、しかも、本件事故発生当時は夜九時を過ぎた時刻になっていたことを考えると、被控訴人近江八幡市のとるべき措置としては、右のような一般の通行人に危険の存在をしらせ、これに近寄らせない措置で十分であったというべきであり、冠水中の本件市道に夜間幼児が保護者の監護なしに一人で立ち入って本件河川に接近し、その結果本件河川に転落するというような事態は、被控訴人らにおいて通常予測することができない危険接近への行動に起因するものであったというべきである。」
(一三) 同二六枚目表について、三行目の「本件市道」の次に「側」と付加し、一〇行目の「(3)」を「(2)」と改める。
(一四) 同二六枚目裏について、七行目の「過失」の次に「(なお、控訴人らは本件県道を西進し、本件市道との交差点を通って本件パチンコ店へ入りながら右パチンコ店の東側に接する本件市道への通行規制やバリケードなどの設置に気付かなかった旨供述するが、右の異常な状態は僅かの注意さえ払えば気付くことができたはずであり、これに気付かず幼児の行動に対する規制、監視を怠った控訴人らの過失は大きいといわざるを得ない。)」と付加し、一〇行目の「言えず、」を「言えない。」と改め、同行の「したがって」から一二行目の末尾までを削除する。
(一五) 同二六枚目裏末行の「営造物」から二七枚目表初行の末尾までを「被控訴人近江八幡市のとった応急的危険防止措置は適当なものであったとみるべきであり、本件市道の設置、管理に瑕疵があったとは認められない。」と改める。
(一六) 同二七枚目表について、二行目の冒頭から一一行目の末尾までを左のとおり改める。
「4 控訴人らは、本件河川の安全性に瑕疵があったと主張するが(請求の原因3の(一)の(3))、本件河川が本件事故当時氾濫し、その前にも年数回氾濫していた事実は認められるものの、先に認定したとおり本件事故が広明の通常予測することができない行動に起因するものであったことから考えると、本件河川の氾濫と本件事故との直接の因果関係を肯認することは困難であり、本件河川の安全性の欠如を理由として被控訴人滋賀県に本件事故の責任を問うことはできないというべきである。」
二 以上により、原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。よって、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大久保敏雄 裁判官 妹尾圭策 裁判官 中野信也)